カグの樹の脚

つばめ綺譚社の紺堂カヤの小説『カグの樹の脚』を連載形式で順次公開してゆきます。

連載

連載第十五回 着地、そして、次の空へ

それからハブに直帰できたわけではもちろんなく、モモとエルマーは第九八球に戻ってトルネリコ周辺がどう解決したかを見届けた。 姿を表せばいろいろと説明が面倒になりそうだ、という意見の一致の元、少し離れた地域で衣服を調達し、変装した上でこっそり遠…

連載第十四回 脚

「その答えすら、私にはもう差し出せない」 口が、勝手に動いた。けれど不思議と、体が乗っ取られているとか、操られているというような感じはなかった。「ただ、これだけは」 自分にこんな声が出せるとは思わなかった、と驚き、そして気恥ずかしくなるほど…

連載第十三回 樹上

夕暮れ近くになってようやく静かになった小屋の中で、エルマーは大きく息をついた。 夜明けとほぼ同時に眠りについたエルマーが次に目覚めたとき、いったいどうしたものだか、数名の若い娘が小屋の入り口で待ち構えており、昼食だと称してたくさんのパンや菓…

連載第一回 空からおりてきた少女

吸込青(すいこみあお)、という色がある。 真夏の昼過ぎ、いちばん日差しの強い時間の、入道雲のむこうに広がる空の色である。ほかの色という色を、すべて吸い込んでしまった深い、深い青は、空を見上げる者の視線を捕らえる。 古代よりこの色は人々の心を…