カグの樹の脚

つばめ綺譚社の紺堂カヤの小説『カグの樹の脚』を連載形式で順次公開してゆきます。

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

連載第三回 ドーナツとネクターと

近道と言ったのは嘘ではないけれど、脇道を選んだのには別の理由もあった。丘に向かうにはペシェが通う学校を越えて行かなければならない。通学路になっている大きな道の周囲は、同級生たちに出会う確率が高かった。できるかぎり、遭遇は避けたい。 どんなに…

連載第二回 透明な絵具

翌日の朝8時ちょうどに、時計広場へ行くと、モモはすでにやって来ていた。ペシェの顔を見るとちょっと眉を動かしたが、何も言わなかった。昨日の、親しげな感じとは随分違う。 「おはよう……」 「おはよう」 挨拶は返してくれたので一応は安心して、ペシェは…